ル・コルビジェは、1887年にスイスで生まれで、フランスにて活躍した建築家です。
建築を学び始めた学生が最初に覚える建築家の一人といっても過言ではない人物です。
今回はル・コルビジェ入門として、先ずは抑えたい3つのポイント
❶国立西洋美術館、❷LC2(ソファー)、❸近代建築5原則を紹介したいと思います。
先ずは抑えたい3つのポイント
①国立西洋美術館
上野公園内にある西洋画や彫刻を展示している日本最大規模の美術館です。
実業家の松方幸次郎が1910年代から1920年代にかけて、集められた美術品コレクション
(松方コレクション)のうち、西洋美術品の一部がこの国立西洋美術館に所蔵されています。
この美術館の設計につきましては、ル・コルビジェが基本設計を行い、
ル・コルビジェの弟子だった3人の日本人建築家(前川國男、坂倉準三、吉阪隆正)が実施設計を行いました。
基本設計:平面図(間取り)立面図(外から観た形)断面図(主に各階の高さ関係を知るために用いる図)
実施設計:建物を造り始める際に必要な詳細な設計。例えば、コンクリートの厚み、手すりや階段の形をデザインしたり、窓のデザインを納めるための図面を描く設計です。
ちなみに、コルビジェの基本設計図には寸法が描かれていませんでした。
なので、長さ、高さ、厚みなどを各自で決めないといけないため、3人の弟子は苦労したようです。
無限成長建築
皆さんは、実際に国立西洋美術館の館内に入ったことはありますでしょうか?
絵画の鑑賞の動線が、建物中央から始まり、のの字に回って歩いていくのにお気づきになったでしょうか?
これはコルビジェが意図的に行なったもので、将来的に展示作品が増えた場合に備えて、
渦巻き状に建物を増築すれば、無限に拡張できると考えていたためです。
これをコルビジェは、無限成長建築と呼んでいます。
実際には、この増築方法を行うとオリジナルの西洋美術館が増築部により隠れてしまうので、
実現されず、国立西洋美術館の脇に新館を建てることになりました。
②LC2(ソファー)
LC2
この写真のソファーをどこかで見かけたことありますでしょうか?
漫画やアニメ好きであれば、ピンときた方もいるかもしれません。
SPY×FAMILLYの一巻の表紙で主人公ロイド・フォージャーが座っているソファー
と同じではないかと。
そうです。このソファーをデザインしたのがル・コルビジェなんです。
LC2と呼ばれ、1人掛から3人掛けまであります。
家具メーカーのカッシーナにて現在も販売されており、
1脚64万円〜購入できます笑
リプロダクト品であれば安くで入手することはできますが、
牛皮やスチールの質等は劣ったりするので、購入の際には注意が必要です。
※リプロダクト品…意匠権などの権利が切れたデザインを真似て作った製品
また、コルビジェがデザインした家具はシリーズ化されており、
LC1、LC3〜LC7があります。
③近代建築5原則
近代以前の建物は、石積みやレンガ積みの家なので、
窓(開口部)を大きく開けると上からの重りに耐えられないため、
水平(横方向)に窓を大きく開けることはできませんでした。
しかし、コルビジェは鉄筋コンクリートを用いることで、
柱と床と階段で構造を安定させるドミノ・システムを提案し、
以下の5つが実現可能になりました。
1 ピロティ (建物の一部が独立柱で支えられている空間)
2 自由な平面 (各階が似た形にする必要がなくなりました)
3 自由な立面 (各階が似た形にする必要がなくなりました)
4 連続水平窓 (横方向に窓が連続で配置が可になりました)
5 屋上庭園 (建築することで、その場所からなくなった植物を屋上に植え代用)
この5原則の用語だけを見て、
どういう建物なのかイメージできる人はなかなかいないかと思います。
この5原則を具現化した住宅があります。その名は、サヴォア邸です。
サヴォア邸
パリ郊外に建つサヴォア邸は、まさに近代建築5原則を忠実に再現した住宅です。
写真より解説したいと思います。
①ピロティ
地上部分の空間を開放するために構造を支える鉄骨コンクリートの柱のことです。
これにより、建物下を自動車が通ることが可能になったり、
これまでにない宙に浮いたような印象を与える建物が実現しました。
②自由な平面
これまでの西洋の建物は組積造で、石やレンガ、コンクリートブロックを積み上げていく工法でした。
積み上げた壁が構造壁の役割を果たし、床を支えていました。
また、組積造は構造壁と構造壁のスパンが離れると、床を支えることができなくなるため、
部屋の広さにも限りがありました。
一方、コルビジェは床を柱と梁で支えるドミノ・システムを採用することで、
構造壁を排除することができ、広々とした部屋を作ることができるようになりました。
また、下の平図面より、1階と2階とで平面図が大きく変わっています。
③自由な立面
組積造の建物は、外周部の壁(外壁)が構造壁となっており、
大きい窓を設けると構造壁が減り、支えることができなくなるので、
窓を空ける面積に限りがあり、自由な形にすることができませんでした。
しかし、ドミノ・システムによって、柱と梁が床を支えるようになったため、
外壁が構造壁の役割を失くしたことで、外壁を自由な形にすることができるようになりました。
遊び心か屋上のソラリウムには曲面の壁を設けています。
こちらは②、③の自由な平面と立面を同時に満たしたものとなっています。
④水平連続窓
壁を挟まず水平に窓が連なっています。
③自由な立面より、従来の建物では水平に窓を入れようとすると、
構造壁がなくなり、上からの荷重に支えることができなくなるので、
水平窓の実現ができませんでした。
こちらもドミノ・システムを採用することで、外壁が耐力壁の役割から解放されたことで、
連続して水平窓を設けることが可能になりました。
⑤屋上庭園
コルビジェ以前は、庭園と建物は別々に分かれているものでした。
こちらもドミノ・システムにより屋根がフラット(平面)になったため、
屋上に庭園を設けることができるようになりました。
ちなみに当初は、屋上庭園の案を施主のサヴォア氏は魅力的だと思わなかったそうですが、
コルビジェが説得をし、実現したそうです。
最後に
今回は国立西洋美術館、家具、近代建築5原則について紹介しました。
今後は、コルビジェの建築作品、モデュロール、3人の日本人の弟子などを紹介したいと思いますので、
よろしくお願いします。
◆コルビジェの建築作品を紹介
・母の家(Villa “Le Lac”)
・ラトゥーレット修道院
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